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平成22年度 健康講話 4月


健康・体力づくり施設の効果的な利用方法

とやま健康パーク 泉 一郎
事業推進課係長
健康運動指導士、博士(医学)
 
スポーツ≠ニ運動≠ヘ、どこが違うのでしょうか。
 勝ち負けが関係するものを「スポーツ(競技志向型運動)」といい、勝敗、競争を伴わないものは「運動(健康志向型運動)」と言います。発育発達期にある時期には「スポーツ」を行い、全力を出し切ることが求められます。しかしながら、中高年者に全力を出し切ることを求めると危険が伴うので、最大下の運動強度で運動を行います。とやま健康パークは、健康志向型運動を行う施設です。


1 健康に関わる体力要素

 健康に関わる体力要素には@身体組成、A全身持久力、B筋力/筋持久力、C柔軟性の4つがあります。
 最初の身体組成とは、からだのつくりがどうなっているかということです。体重に占める脂肪の割合が高く、特に腸の周りに付いた過剰な内臓脂肪組織からは血圧を上げたり、インスリンの効きを悪くしたり、血栓をつくりやすくする悪玉の生理活性物質が分泌されます。そのため、BMIや体脂肪率から肥満の評価判定がなされます。 
 2番目の全身持久力ですが、その指標としては最大酸素摂取量があり、体力の科学的なものさしとされています。全身持久力は心肺持久力とも呼ばれ死亡率、寿命と深い関係があることがわかっています。
 現在、日本の死亡原因の2番目、3番目は心臓病、脳血管障害です。ともに血管の老化で起こる病気であるという共通点があります。心臓と肺、そして血管の機能がよいと高い最大酸素摂取量を保持できることがわかっているので健康に関わる体力要素の中で最重要視されています。体育大学等では、呼気マスクを装着して最大努力時の最大酸素摂取量を直接測定することも可能ですが、一般中高年者に最大努力を強いると危険が伴うので、最大下の運動から最大値を予想する間接法による推定値が用いられています。  

3つ目の筋持久力という体力要素は、上体起こしという体力テストで評価されます。上体起こしの回数が極端に少ないということは、背筋と屈筋のバランスが悪く腰痛を起こしやすいということで健康に関わる体力要素とされています。柔軟性は長座位体前屈テストで評価され、腰の周りの柔軟性が悪いとお腹周りに脂肪が多く、腰痛を起こしやすいということで健康に関わる体力要素とされています。      


2 動脈硬化を予防する運動

 「ヒトは血管と共に老いる」と言われます。動脈硬化が進むと心臓病や脳血管障害を起こしやすくなるので、動脈硬化を予防する運動が推奨されています。全身運動、すなわち有酸素運動を行うことによって循環血流量が増え、血管壁に摩擦力(ずり応力)が生じると血管内皮細胞から血管をしなやかにする物質が分泌されることが近年わかってきました。
 このようなことから、健康・体力づくり施設には有酸素運動を行うマシンが多く設置されています。ランニングマシン、自転車エルゴメータ、クロスカントリースキーの動作を行うクロストレーナー、山登り動作を行うクライムマシンがあります。
 有酸素運動とは、酸素の需要と供給が釣り合ったリズミカルに大筋群を動かす運動を言います。強度は相対的運動強度で表示します。例えば、75%HRmaxの強度。これは、最高心拍数の75%に相当する心拍数でのトレーニングの強度のことです。時間は30分以上、頻度は週2回以上がお薦めです。


3 ウォーキングと水中ウォーキングの効用

 カタカナで書くウォーキングという言葉は、健康を意識して普段より、やや長く歩く。普段より、やや速く歩く。普段より、やや歩幅を広げて歩くことを意味します。現在の自分の体力を基準とするので、普段よりという言葉が重要です。ちなみに、世間では目的なく歩くと徘徊と呼ばれます。健康スタジアム内にある75mの空間走路はウォーキング強度(目標心拍数)が適切かどうかを知るために利用してください。

 血圧、体重と体脂肪率を測り、定期的に肥満度を知ることで適正な体重維持管理につながります。運動時間は有酸素運動30分、筋力トレーニング10分、ストレッチング5分を目安に実践されるとよいでしょう。鏡の前で自らのからだの変化に気づくこと。幅広い年齢層の利用者の中に一緒に入って運動を行うこと。トレーニングカウンタースタッフと会話を交わすこと。すべてが健康・体力づくりに役立つ行動です。
 温水プールの水中ウォーキング、アクアエクササイズは体重が重く、陸上では過度に膝関節に負担がかかる方にお勧めできる運動です。運動することによって交感神経を刺激すると、からだを休める副交感神経もよく働くようになります。よく運動すると、よく眠れるようになります。運動施設と休養施設が一体となっていることが、とやま健康パーク施設の特徴です。


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